2007/12/15

ひと様の軒先を借りてのスパムなSEO

よくもまあ目ざとくこんなのを拾ってくるなあ。Web 屋のネタ帳より『CNET「読者ブログ」上でSEO業者が検索エンジンスパムな記事を何本も書いている件』。多くは画像で説明されているのでリンク先をご参照あれ。
こんなのがSEOを語ろうとは片腹痛い。
まあ、騙っていただく分にはよいのでは(苦笑)

CNET 読者ブログの書き手の質は相変わらず、ということなのだろうけど、ひと様の軒先をお借りしていることについて感謝のかけらも感じられない輩は意外に多いもの。せっかくなので、筆者の知っている例を挙げてみよう。

三井物産VI×IA(都合により伏字)のE見という方(同じく仮名)がMarkeZine の編集者ブログへ投稿されたこちら:「 第6回 SEMのROIを高めるロングテールキーワード」。文中に何回か出てくる「SEM」というワードにリンクが設定してあり、リンク先はすべて「http://www.vixia.co.jp/sem/ 」。こちらはスタイルシートで隠す、などの姑息な手段はとらずストロングスタイルで勝負している。

SEM のリンクに注目

この会社は特段にSEO を手がける業者という訳ではなく、米国で3番手の検索連動型広告のサービスを日本に持ってきて失敗したり、同じく米国で実績のある入札管理ツール(というか実際はもっと高度だけど)を日本に持ってきたりしている。まあSEO に関しては素人ということで大目に見るべきなのかもしれないけど、先ほどのページのリンク元なんかを見ると、やはり身の程を知っていただく必要はあるのかもしれないと感じられる。

  Yahoo! で「link:http://www.vixia.co.jp/sem/」を検索

看板の商社名が泣きそうな体たらくだが、行為の是非に関する判断は読者諸賢にお任せする。

2007/12/13

デジタルフォレスト(Digital Forest )の奇怪な増資



アクセス解析ツール「Visionalist (ビジョナリスト)」を提供するデジタルフォレストが第三者割当増資により4億円を調達、というニュースが、一部サイトで昨日ひっそりと掲載された。同社のリリースによると、
2007年11月30日払い込みにて、第三者割当増資で総額4億円を調達しました。これにより資本金は、4億3,570万8,000円となりました。今回の増資で、経営基盤の強化を図るとともに、デジタルフォレストの主力製品である『Visionalist』の機能強化や、Webマーケティングの新規サービスの創造とグローバル展開に取り組んでいきます。
とのことなのだが、不思議なことに、割当先がどこにも記載されていない。GMO インターネットがヤフーの支援をあおぐ、というなかなか論評しがたいニュースの陰で、ニュースバリューの根幹が欠けた状態にもかかわらず今回の件を果敢に記事化した媒体のひとつ、ベンチャーナウでは多少つっこんだ取材を行っており
今回の増資に至った経緯については「事業のグローバル化と従来サービスの強化、新製品開発に向けて今回の増資に至った。今回の第三者割当増資については発表している以上のことは公開できないが、これに伴う大株主の変更はない」(同広報)と説明。増資後も「どこかの子会社になったということはない」(同広報)と話した。
と報じている。ただ、デジタルフォレストの会社概要ページにはそもそも株主の記載がなく、どういった株主構成となっているのかは不明のままだ。好意的に解釈すれば、開示することで当該株主の競合にあたる一部顧客の流出が想定される、などの事情があるのかもしれない。某「同窓会サイト」での事件等、うがった見方はここでは割愛する。

なぜ非公開企業の増資についてこのように取り上げるのかといえば、やはり同社が「Visionalist (ビジョナリスト)」の提供元であるためだ。Omniture のSiteCatalyst(サイトカタリスト)やGoogle Analytics などに対抗しうる国産アクセス解析ツールとして、妙なトラブルなどの事態は避けていただきたいし、何より顧客のオンラインマーケティングの中核にあたるアクセス解析データを預かる企業として、振る舞いを再考する必要があるものと感じられた。

*12月22日追記
本エントリー投稿の4日後、12月17日に割当先や割当額などの詳細が公表された。割当先はすべてベンチャーキャピタルで、今回の増資におけるデジタルフォレスト社の企業価値評価額は約30億円、とのこと。さまざまな意味で興味深い。当初の「発表している以上のことは公開できない」というコメントはなんだったんだろうという気がしなくもないが……

ところでこのひどいコラムはいったい……?

さて、デジタルフォレスト社はここ最近、執筆や講演等を精力的に行っている。舶来でない、日本のオンラインマーケティング事情に即した啓発活動という意味で期待は大きく、たとえば翔泳社「MarkeZine 」の主催したイベント「MZ Day 2007 」でのモバイルに関する講演などは実際に評価も高かったようだ。

ただ、japan.internet.com に掲載された一連のコラムはあまりにレベルが低く、目を覆わんばかりだ。たとえば、
ページビューをビジネスの言葉に置き換えるならば、それは“売り上げ”である。
ページビューという指標の落とし穴
そんなわけはない。せいぜい店舗であれば“来店”、法人営業なら“パンフレットを持ち帰ってもらった”くらいが妥当なところだろう。あるいは、
その Web サイトのコンバージョンは、社長が主催するセミナーに訪問者を申し込みさせることなのだが、(中略)「どんなキーワードで出稿するのですか?」と尋ねてキーワードのチョイスを見せてもらうと、ビッグワード(ビッグワードとは「転職」「中古車」など月間10万件以上検索されるキーワード)が多い。
広告代理店も知らないリスティング広告の罠
なんといってもタイトルがひどい。実際にこんな間抜けな代理店が存在しうるのか疑問だが、取引先のとある代理店が低レベルだからといって、それを一般化されては話が進展しない。すべての広告代理店は抗議すべきではないか。
4マスプロモーションは(中略) Web のように、その広告を見た人の行動を完全にトラッキングすることは不可能であるため、何をきっかけにその製品を知り、購入しようと思い、実際に購入に至るのかの可視化が難しい。そこで、テレビ CM の効果を可視化しようということで現れたのが、テレビから Web へと誘導させるタイプの広告だが〜(後略)
「続きは Web で」というあのテレビCMは本当に効果的だったのか?
メディアによって特性が異なり、得意・不得意があることは真っ当なマーケターにとっては周知の事柄であり、それぞれの強みを生かしながらキャンペーンを構成する中で、テレビからWeb サイトへ誘導することを狙っただけの話では? 可視化が主目的でWeb に誘導ということはあり得ないし、すべてが可視化されるとは誰も思っていないだろう。

世の中にこれよりひどい記事が蔓延していることは否定しないが、デジタルフォレストの「チーフコンサルタント」がこのレベルというのは情けない。猛省を促したい。

2007/12/04

「緑のgoo 」とYahoo! JAPAN の自殺対策

環境goo 」など、環境への貢献を地道に続けているgoo が、11月28日から緑のgoo 」という「地球にやさしいサービス」を期間限定で実施している。(経由:WWF )



企画の趣旨としては「期間中、“緑のgoo”の検索画面にアクセスしていただき、通常のウェブ検索にご使用いただくことで、運営者のNTTレゾナント株式会社が得る運営収益の15%相当を環境保護団体に寄付するという企画です」というもの。トップページの「gooの木」は検索回数に応じて成長するとのことで、アイデア自体は「ecotonoha(エコトノハ)」に近い。ブログパーツを配布するなどのしかけが今風といえるかもしれない。地味だがよい取り組みだと感じられた。

*12月5日追記
コメント欄「匿名」氏のご指摘にあるとおり、「緑のgoo 」自体は2007年8月から実施されているものであり、第1期(2007年8月〜11月)にFoE Japan(Friends of the Earth Japan)への募金・寄付を行った後に、11月28日よりWWF を対象とした活動に入っているということであった。本文中の文言を一部修正するとともに、ここに追記する。

Yahoo! JAPAN の自殺対策

こちらは積極的な対策というより、「自殺の名所近くに生命の大切さを呼びかける看板を立てる」ような取り組み。プレスリリースなども出ていないらしく、取り上げている媒体が少ないようだが、個人的に大事だなあと感じたニュース。
ヤフーが「自殺サイト」対策を導入(時事ドットコム)
ヤフーは30日、「自殺サイト」を閲覧しないよう働き掛ける機能を同社のポータルサイトに導入すると発表した。ポータルサイトの利用者が「死にたい」などのキーワードで検索すると、「自殺は防ぐことができる」などのメッセージが現れ、ロゴマークをクリックすると、精神保健福祉センターや「いのちの電話」などの相談窓口を掲載したページが開く仕組み。
「いのちの日」である12月1日の午前零時に開始されたそうだ。試しに「死にたい」と検索してみた結果がこちら:


「自殺は防ぐことができる ためらわずに、助けを求めることが、何よりも大切です」とのメッセージとともに、自殺予防総合対策センターへのリンクが表示されている。目的がはっきりとしないまま、自分の気持ちを検索ボックスへ打ち込む人、というのは一般に想像されるよりも意外に多いものだ。毎日、何人かがこのリンクをたどって自殺を思いとどまることになれば、それも知られざる社会貢献と言えるのではないか。

#それにしても「死にたい」で表示される広告は、関連性が低いか、信頼性に難があるのではないか。広告審査の方々にはがんばっていただきたい。こちらの苦情はオーバーチュアで正解である。

2007/11/01

Yahoo! バナーの苦情はオーバーチュアまで。

あまりのことに不覚にも笑ってしまった。Yahoo! 知恵袋に「 Yahoo!に出てくるバナー広告に対する苦情はどこに言えばいいの?」なる質問が。
テレビの広告ならば苦情を言える場所がありますが、ヤフーのバナー広告について苦情を言いたい場合どうしたらいいのでしょうか?
あまり気持ち悪いバナー広告は出して欲しくありません。


この質問に対する「ベストアンサー」がなんと、
たぶん、オーバーチュア株式会社 だと思います。
ほんまでっか……質問した方は律儀にもコメントに「後日オーバーチュア社に連絡を取ります」なんて書いているが、連絡されても困るだろうなあ。しかもこの質問、「解決済み」になってて訂正のしようもない、と。

#巷で話題の外部リンク販売問題については元ア×オ×クス社チーフアナリストの某氏にお任せ。N 氏への反論中、「SEO の本質」として述べたくだり以降の数段落には私もほぼ同意。「重要度」は自分で言うことではないと思うけど。

2007/10/23

外部リンク系SEO スパムの話

まずはGJ (Google Japan ではなくてGood Job )といってよいだろう。Web 屋のネタ帳による「有料リンクは是か非か?黒にんにくネットとアイオイクス社とGMO」。旧 忍者システムズ(現 サムライファクトリー)の専売特許と思われがちな「アクセス解析ツールの無料配布による外部リンクの大量獲得」というスパム手法の日本における開祖については、歴史に残す必要があるだろうと私も思っていたところだった。



*なお、当該エントリー(↑)に対して配信されたGoogle アドワーズ広告のコンテンツターゲットが「rank6 からの直リンク seo効果抜群!」なのは、なかなかブラックで笑えると思うがどうか。

当該のSEO スパム手法は遅くとも2003年には始まっていたと記憶しており、業界的には以前からよく知られていた手法ではあるが、公の場では確かにあまり指摘されてこなかった(手前みそだが、『 「低価格版SEO」って、まったくもう……』もご参照を)。ツールを用いた同様の手法として、旧 E×マーケティング(一部伏字)が掲示板のcgi を無料で配布し、バナーに見せかけてalt 属性にキーワードを含んだクライアントサイトへの直リンクを設置する、という手法を取っていたのも思い出される。

まあ、外部リンクに関して完全にシロと言い切れるSEO 会社は現存しないのでは、と正直なところ思わなくもない。ネタ帳のwatanabe 氏が最後におすすめしている会社にしても、リリース配信サービスを外部リンク獲得の手段として売り出す始末だし。ただ、同じグレーでも、限りなくクロに近いダークグレーから、多少の後ろ暗さがある程度の軽い灰色まで、実態はさまざま。クライアントにリスクも含めて説明しているかどうか、善意の第三者を巻き込んでいないかどうか、というのは判定基準のひとつだろう。

この話、先般予告してそのままになっている「ネットクラゲ掃討」につながるものであり、今後もう少し書いてみる予定。

*関連するエントリー:

2007/10/08

SEO スパムですらない

#久々の更新がSEO スパム関連というのはいかがなものか、と自分でも思いつつ……

検索エンジンで「銀のさら」と検索してみよう(探しているのはペットフードではなくて宅配寿司のほうだ。念のため)。検索結果の1位はYahoo! でもGoogle でも「www.ginsara.jp」。クリックすると(回線速度やブラウザの描画性能にもよるだろうが)、妙な文字列が一瞬表示され、すぐに「http://www.ginsara.jp/index.htm」にリダイレクトされる。ヘンだなと思い、Firefox でURL 欄に「viewsource:http://www.ginsara.jp」と入力してみる。出てきたソースがこれ:

SEO スパム失敗画面

……やれやれ(村上春樹風)。また悪質業者にだまされてSEO スパムの片棒を担がされたのだろうか(容疑者:ttp://www.seoaxis.com/ )。このソースをもとに、一瞬表示される画面を再現してみた:

SEOスパム失敗ソースコード

宅配寿司を求めてクリックした検索ユーザーに対してこんな画面を表示していては、せっかく指名買いで来訪してきた見込み顧客なのに、怖くて注文する気がなくなってしまうのではないか。

ちなみにこのページ、リダイレクトにmeta タグのrefresh を使っている。
<meta http-equiv="REFRESH" content="0;URL=http://www.ginsara.jp/index.htm">
筆者が理解しているかぎり、meta タグでの0秒リダイレクトは恒久的移転(301)と同様に取り扱われ、リダイレクト先のページがインデックスされるとともに、リダイレクト元のURL に対するリンクも引き継ぐのではなかったか(参考:Yahoo! 検索ヘルプ)。つまり、SEO(スパム)としての役割も果たせず、顧客のビジネスに害を与えて終了、ということだ。


【補足】
時おり、本Blog に「SEO スパム」で検索して来訪される方があるので、関連するエントリーを以下にまとめておく:

2007/09/12

comScore の微妙なプレスリリース

comScore の日本上陸には期待していただけに残念。誰も妙だとは思わないのだろうか。MarkeZine の記事より「コムスコア・ジャパンいよいよ始動、『qSearch 2.0』で日本の検索市場を斬る」。
プレスリリースでは、日本の検索市場でしのぎを削るYahoo!と Googleの2006年7月と2007年7月のデータに関する「qSearch 2.0」のレポートも公開されている。全検索件数は、2006年7月の47億5,400万件から2007年7月の57億9,500万件へと21.9%増加している。これをYahoo!とGoogleのそれぞれのデータを見ると、検索件数はYahoo!が31億3,400万件から27億4,400万件と 12.4%減、Googleは、13億2,200万件から20億2,700万件と53.3%増。
文中には2006年7月と2007年7月、それぞれの月における全検索件数およびYahoo! 、Google での検索件数が記載されている。つまり、全検索件数からY! とG の検索件数を引くことで、「Yahoo! JAPAN とGoogle 以外の検索エンジンの合計検索件数」を求めることができる。主要なところではMSN, Excite, Goo, Infoseek などだろうか。計算してみたのがこちら(Other の行)。



さて、この一年の間に、2強以外の検索エンジンにおいて検索件数が大幅に増加するような出来事があっただろうか? 個人的には思い当たるものがまったくない。あくまで感覚値だが、Other の割合はここ数年、1割前後というのが妥当なところではないかと思う。つまり、2006年7月の数値がおかしい(2強のシェアが高過ぎ)と推測されるのだが、どうか。

*9/13 加筆:Other の伸びは、件数ベースでもGoogle の伸びを上回っている。伸び率では前年同月比243.6%増というから、通常なら大躍進のはずだ。この数値に何が内包されているかは説明が必要だろう。

#Other が実際に増加していて、それが2ちゃんねるやYouTube だったらそれはそれで興味深い数値だが……

原本である英文のリリースにあたると「Searches Per Searcher」(一人当たりの検索件数)の数字も確認できるが、こちらも率直に言って「?」がつく。日本においてはGoogle はインターネットリテラシーの高いヘビーユーザーが使う、というのが一般的なイメージとなっており、一人当たりの検索件数も多いものと推測される。しかしこちらの調査では、Yahoo! JAPAN での数字が低下する一方、Google での数字が上昇し、逆転したことになっている。

「思い込みはともかく、実際の数字はこうだよ」と言われれば「そうなんですね」というしかないが、上述のOther の件があるだけに素直には納得しがたい。関係者には詳細の開示をいただければ幸いだ。

SEM 業界と旅行業界の相似

#どこかに同じような発言があったらごめんなさい、なのだが……

日本のSEM、とりわけ検索連動型広告の世界と航空/旅行業界は、ビジネスの構造に似たところがあるのではないか、という思いつきを何となく書いてみる。

【キャリア(航空会社)】
JAL/ANA の2強が熾烈な競争をくり広げている。時折り小規模事業者の参入があるものの、だいたいは採算が合わず撤退するか、青息吐息の状態。

【代理店】
JTB などの歴史ある旅行代理店から、格安航空券の取り扱いに始まりいまや一定の存在感を持つに至った新興系の旅行会社(HIS など)、西遊旅行のように限られた地域に特化した代理店まで、お互いがなんとなく意識しながらもとりあえず棲み分けを行っている。実際の現地オペレーションはアウトソースしているケースも。

【利用者】
自分で手配する手間をいとわない旅行者はオンラインから直接申し込みを行う時代に。とはいえ主流はまだまだ代理店経由。

それぞれの固有名詞に対してSEM 業界ではどの企業が相当するかなど、業界の方であれば何となく浮かんでくるのではないだろうか。もちろん合致しない点も多いが、自分の属する業界のことは案外見えないものなので、他の業界に置き換えてみたら、というのが本エントリーの主旨。ではSEO をはじめとする他のマーケティング手法は何に相当するか、など、考え出すとけっこう面白いのは私だけだろうか。

2007/09/10

Van Halen 公式サイトのURLは?

少し前の話になるが、某KM さんのmixi 日記経由で「David Lee Roth がVan Halen 復帰、米国ツアーへ」という情報を得た(参考:CNN.co.jp)。初代ボーカルのDave Lee Roth といえば一般には"Jump" が想起されるかもしれないが、業界的にはやはり"Panama" だろう。なぜPanama ?と疑問に思った方にはこちら:

パナマ運河が世界の物流を一変させたことにちなんで、開発コード「パナマ(Panama)」と名付けられていたオーバーチュアの「新スポンサードサーチ」。
何が変わる? 「新スポンサードサーチ」の変更点&新機能をチェック


そういえば、Van Halen 一家がOverture Services 発祥の地(もっといえば、その母体となったIdea Lab の本拠地)、Pasadena(パサデナ)で育ったというのはもしかしたらあまり知られていないかもしれない。豆知識ということでどうぞ。


本題:URL 直打ちの問題点

さて後日、上記Van Halen 再結成のニュースについて詳細を確認しようとした際、ドメインが「バンド名+com」だったことを記憶していたので「www.vanhalen.com」とひとつづきに打ったところ、出てきたのはVan Halen のファンサイトだった。

Van Halen 公式サイト Van Halen のファンサイト


公式サイトは「www.van-halen.com」とハイフンが入る(左が公式サイト、右がファンサイト)。この経験を通じて、あらためて検索によるナビゲーションの優位性に思い至った。URL を直接入力することの問題点としては他に、
  • www の有無
  • ドメインは?(com/net/org/jp/co.jp/ne.jp...)
  • Typo(タイプミス)の可能性
などがあり、とりわけアルファベットになじみのない日本のインターネットユーザーにとって、URL を直接入力することがいかに敷居が高いか、はもっと認識されてよいだろう。


検索の役割:始まりの終わり

……とだらだらと書いてきたのは、日本における検索のクロスメディア利用に関する事例を収集し、検索エンジンと各種広告との相互関係を研究してきたブログ「検索エンジンと広告」が終了のアナウンスを出していたのを目にしたから。

今回の判断に至るまでにはおそらくいろいろとあったのかもしれない。ただ、(上述のような)単なるナビゲーションとしての検索ではなく、全体として効果を生み出す広告キャンペーンの一部としての検索、という視点から収集された事例の数々は、成功例/失敗例を問わず、ひとつの時代を記録するものとして貴重なコレクションとなっている。

例えば日経新聞の広告企画として二十数社を集めて検索キーワードでのサイト来訪を訴求した「けんさくGO」のうち、Organic/Paid のうち何ひとつとして表示されない企業があった例だとか(何を考えて広告企画へ賛同したのか……これはダメな例の極北)。逆に「服装自由」など、無理なく検索を誘発する好例もあまた記録されている。

Firefox、Safari はもとより、IE も7からはブラウザ自体に検索窓が配置されるようになった今こそ、ユーザーを迷わせず、的確なサイトへ誘導する検索の役割が評価される時代に来ていると思われる。また効果を計りがたいマス広告を手がけてきた総合代理店、狭い領域での費用対効果の最適化に邁進してきたネット専業代理店ともに、包括的なキャンペーン設計の重要性について認知が進み、立体的な効果計測とそれぞれの施策の寄与度評価について機運が盛り上がってきたところだろう。

「ブログ自体も残すかどうかを検討中です」とのことだが、杉原氏には業界全体の資産として、ぜひとも残すことを希望したい。

2007/08/10

News2u はSEO ツールなのか

#タイトルは前回の「Blogger はSEO ツールらしい」を踏襲したのと、
#ヘンにぼやかさず当該企業の方にご認識いただいたほうがよかろう、という意図から。

一読して困惑、のニュース。「プレスリリースのSEO効果に注目!アイレップ、2つのリリース配信サービスの販売を開始」。一部引用すると、
プレスリリースの配信サービスには2つの効果がある。1つは、インターネット上の複数のニュースサイトへリリースを一括配信することによって、多くのネットユーザーやブロガー、メディアに情報を伝え、そこからさらに情報の伝播を派生させる点。もう1つは、情報がニュースサイトやブログなどに掲載されたときに、自社サイトへのリンクが設置される点。これが検索順位に大きな影響を与える外部リンクの強化にもつながる。

この点に注目したアイレップは、SEO対策の一環としても活用できるとして、今回この2つリリース配信サービスの取扱いを開始すると同時に、SEOサービスの充実によってクライアントの満足度の向上を目指すとしている。
読んで真っ先に浮かんだ疑問は「アイレップのSEM 総研所長である渡辺隆広氏は、このリリースにGo を出したのだろうか?」というもの。次には「News2u の関係各位はこの件のリスクを理解しているのだろうか?」という心配が。順に説明する。




外部リンクの獲得はあくまで副次効果

配信先におけるリンクの扱い(設置方法)等をすべて確認したわけではないが、News2u に代表されるリリース配信サービスにより、自社サイトへのリンクが設置され、外部リンクの強化につながる、というのは事実だろう。ただしその点をサービスの価値として運営者自身や代理店が訴求してしまうと、昨今話題の「外部リンクの販売」というところにつながってしまう(参考:SEM リサーチ「Google、「テキストリンク広告」の通報システムを準備」)。あくまで副次的効果として営業マンのセールストーク等に含めるのは可能だろうが、「2つの効果のうちのひとつ」として謳うのはまずいだろう。

渡辺隆広氏は上掲の「SEM リサーチ」運営等を通じて古くから日本の検索エンジンマーケティングに貢献してきた人物でもあり、業界動向にもっとも精通したひとりであると認識している。昨今の外部リンク操作に関する検索エンジン側の対処を鑑みるに、対価を払ってのリンク設置うんぬんを訴求することのリスク、それも自らの勤務先というよりはその提携先であるサービス運営者をリスクにさらすことについて、彼が理解していないとは思えないのだが……
(SEM リサーチが更新中にもかかわらず本件リリースを取り上げていないことからも、彼の意思が感じられるような気はする)

本来の「PR 2.0」浸透に全力を

News2u 社も、代理店が出すリリースということで事前確認の依頼があったと推測されるのだが、上記リスクを理解のうえで承認したのだろうか。2001年7月開始というから6年以上にわたってサービスを提供しており、掲載先サイトも拡大し、企業にもそれなりに利用されるようになってきたという状況だと思う。今回のように同社が目指すサービスのあり方と異なるところにフォーカスがあたることで、これまで積み上げてきたものが損なわれるおそれがある、というリスクは理解しておくべきだろう。

ついでにいえば、News2u 社からのリリース配信を受けて掲載しているパートナーサイトも、利用企業へのリンクを提供する、ということを目的に提携したわけではないだろう。サービス運営者、ないし関係企業がそういったことを言い出してしまうと、「話が違う!」ということになりはしないか、と老婆心ながら付記する次第。

(参考までに、2006年3月に一部サイトがSEO スパムと判断されてGoogle のインデックスから削除されたCA 社は、上場企業でもあり、当時からアドワーズ広告の販売代理店として日本で1、2を争う売上があった。信頼や営業上のつながりがある企業だからといって判断に手心は加えない、という検索エンジンとしてGoogle の姿勢が示されたものだと思われ、どういった立場であれ油断は禁物、ということも認識したほうがよいかと)

同社の提唱する「PR 2.0」という考え方については、すべてを理解/首肯できるわけではないが興味を持って展開を注視している。今回のような1.0 的なリンク獲得方法を売りにするのではなく、理想の実現に注力していただければ、と期待している。

2007/08/01

Blogger はSEO ツールらしい



以前にトンデモ記事で炎上した著名スパマーがまたやってくれたようで(経由:"検索の鉄人"こと関さんのブログ)。「Googleのサービスから読み取れること」というコラムの冒頭に「Bloggerでわかる、Googleの検索に対する考え方」というパートがあり、いわく
私がおすすめしたいGoogle発のSEOツールは、Bloggerです。
うへぇ。そうでしたか。スパマーに見込まれるBlogger もとんだ災難だが、その論拠がすごい。
Bloggerは、Googleが自ら運営していますから、彼らのエンジンに最適な仕様となっていることが推測されます。
3年以上にわたってBlogger を使っているが、そんな風に考えたことは一度もなかったなあ。Blogspot にSplog (Spam Blog )が大量に開設されるのもその証拠だろうか。Blogspot 上のBlog の6割だか7割だかはSplog だ、なんて話もあったようだが。他にも
Bloggerで面白いのは、ブログでありながらトラックバック機能がないということです。
などとあるが、トラックバックはいつブログの必須要件となったのか。スパマーに欠かすことのできないスパム手法のひとつではあるかもしれないが(後段の「トラックバックがバックリンクとしての能力をほとんど発揮しなくなり、ブログ自体がSEO的にあまり意味がないのではないかと~」あたりがそれを裏付ける)。

コメント/トラックバックスパムからはじまった rel=”nofollow" やBlogeer におけるバックリンク表示機能の話も、2005年末~2006年前半には終わった話題だろう(たとえばこことか)。勉強不足もはなはだしい。こういう輩がSEO の信頼性を下げるわけだ。

2007/07/30

さよならEC ジャパン

日本のSEO 業界において2003年~2004年頃に存在感を発揮したEC ジャパン(イージャパン→EC ジャパン→ECJ コンサルティング)。特にEC サイトなど大規模・動的なサイトのSEO に強みを発揮し、独自のポジションを確保していた。しかしジェフ・ルート氏をはじめとする主要人物が離脱。2007年1月にはSEO コンサルティング事業が某社へ譲渡されたと報じられ、その後の動向が聞こえてこなかったのだが、久しぶりにサイトを確認してみたところ……



荒涼とした風景が広がっていた。ecjapan.jp に対するアクセスは、サブドメインまで含めてすべて上掲の画面が表示される。つまり、かつてのジェフ・ルート氏のブログ( jeff.ecjapan.jp 、在りし日の姿はこちら)などもこういった状況となっている。一方、www.ecjapan.co.jp についてはドメインは生きているようだが、サーバーが見つからないという状態だ。

事業を譲渡することの意味

本来であればこういったインターネット上の資産まで含めて譲渡を受け、継承するものだと思うが、それを許さない何らかの事情があったのだろうか。

一方、事業を継承したとされる某社。そのSEM に関する講演を、都内某所で聞く機会があったのだが、検索技術の発展についていくつかの観点から解説する中で、GrokkerMooter を例に「クラシファイド検索」と連呼していた。分類やグループ化という意味合いのことを言いたいのであれば「クラスタリング検索」ではないだろうか。Grokker でクラシファイド(三行広告)検索を行う人も絶無ではないだろうが。またクラスタリングに言及するのであればVivisimo/Clusty やAsk.com (少し違うが……)などにも触れてほしかったところ。時間配分を間違えてモバイル検索に関するパートが丸ごと省略されてしまうなど、講演の出来としてもイマイチで、さびしい気持ちになった。

今回の件は、ノウハウやマインドがそう簡単に譲渡できるものではないこと、そこを見越して入念に協議を行わない限り、こういったビジネスの継続的な成功はありえないことを意味するのではないかと思われる。

ちなみにECジャパンを離脱した主要メンバーは現在、アユダンテ株式会社で活躍中とのこと。これは皮肉ナシにいうが、日本のSEO のレベル維持・向上のためにぜひがんばってほしい。

*参考(ECジャパンの「企業紹介」):
コミュニティの運営管理やITコンサルタント事業を主としていたEC総合研究所と、コンテンツ管理ソフト開発、ホームページ構築やプロデュースを事業の主軸としていたイージャパン株式会社が2003年7月に合併。新たに設立したのがECジャパン株式会社である。2006年6月には会社分割を実施して、コンサルティングサービス業務を行うECJコンサルティング株式会社、インテグレーション&ソリューション業務を行うECJソリューションズ株式と、これらグループ全体を統括するECジャパンである。 ECジャパングループが手がける事業は、商品ページを効率的に表示させてアクセス数と売上げを向上させる「SEOサービス」をはじめ、ECサイトの開発や販売分析、ユーザービリティーの向上などを図るサービスが充実している。……(後略)
(CNET Venture View 、Yahoo! のキャッシュより)


#本エントリーには一部、自爆ネタが含まれるが、
#分かった方は一人でうなずいて、胸にしまってほしい。

#近々、本ブログにてネットクラゲ掃討キャンペーンを開始予定。

2007/07/09

Gayglers (ゲイグラーズ)って?

ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダーのいわゆる"LGBT" に属するGoogle 社員を指して「Gayglers 」という言い方があるのだそうだ。そのGayglers がSan Francisco のGay Pride parade に参加した際の写真がGoogle Blogscoped に掲載されている(経由:Inside Google 。Google Guy にひっかけたと思しき"Google Gay" という表現も)。



by AntiParticle under CC


SUV の側面に掲げられた横断幕に記されたURL( http://www.google.com/jobs/gayglers/ )に飛ぶと、「Google はGayglers の友人を歓迎する」という趣旨のメッセージが表示される(ロゴが虹色になっているところにも注目)。パレードの様子といい、比較的風通しのよい西海岸の企業ならではという印象を受けるし、またそういったMind なしには同社のMission は達成し得ないと認識しているのだろう。

Googler の派生語
Google 社員をGooglers と呼ぶのは(日本でも)知られてきていると思われ、また近頃急増中といわれる退職者(元Google 社員、つまりex-Googlers )が"Xooglers" と称されるのも詳しい方ならご存知のことだろう。ではこちらは? (ネタ元:同じくInside Google
  • Nooglers (=new Googlers)
  • Looglers (=legal department Googlers、法務部門所属のGoogle 社員)
……いくらでも応用が利きそうである。ちなみにYahoo! 社員は「Yahoos 」なのであわせてどうぞ。

2007/07/01

Blogger ユーザー東京オフ会

@aka さんのところで「Blogger ユーザー東京オフ会」の呼びかけがされている。要項としては、
  • 参加者条件: Blogger でブログを開設している方
  • 日時: 2007-07-21 or 22 (Sat or Sun)
  • 場所: 東京都内のどこか
  • 定員: 決めてません。10 人位い集まればいい方かしらん。
  • 費用: 五千円以内

といった内容で、私も参加の予定。主旨の確認や参加表明は@aka さんのエントリーからどうぞ。せっかくなのでAdWords 公式ブログの中の人たちも参加すれば面白いだろうと思うのだが。

ちなみに@aka さんとは、実はまだ会ったことがない。東京での彼の就職が決まって、働きだして落ち着いたら飲みましょう、という話をしていたもののそのままになっていた。いい機会なのでいろいろ話せれば、と楽しみにしている。

2007/06/12

SEM酒場、3周年

ちょうど3年前の今日、2004年6月12日にSEM酒場が開店した。今日までゆるく続けてこられたのは読者諸賢のおかげに他ならない。感謝とともに、ひきつづきのご指導をいただければと思う。



さて、参考までに本ブログ開設当初のSEM 業界の状況をふりかえってみよう。2004年6月には、
  • 米Google は未上場(上場直前)。この年の8月に上場している。
  • Web 2.0 などという言葉もまだなかった頃。Google Maps などAjax を駆使した革新的なUI のローンチが行われる前年(ただしgmail はこの年の4月に招待制で運用が開始されている)。
  • Yahoo! JAPAN のロボット型検索エンジンにYahoo! Search Technology (YST) が採用された直後。ただし依然として、検索結果ページにはディレクトリ検索の結果がまず表示されていた(YST の結果が優先して表示されるには翌2005年の冬を待たねばならない)。
  • 同じく、Yahoo! JAPAN の検索連動型広告のトラフィックをオーバーチュアが100%確保してまもなく。
  • Yahoo! ディレクトリへの登録申請が、まだ無料でも可能だった頃(商用サイトに関して)。
  • Ask.jp の(企業向けソリューションではない)個人向けの検索サービスはまだ開始されていない。
  • Lycos はInfoseek へ統合済み。
といった状況であった。月並みな表現だが、隔世の感がある。ちなみにこのブログの1st post では
検索エンジンマーケティングその他に関する、某A社のKによる冗語。
と書いたが、その後、某A社はSEM専業として初めて某新興市場へ上場し、筆者もその後に業界内で転職している。こちらもずいぶん昔のことのような気がする。

ここのところ、Ask.com の新しいUI のすばらしさや、某アクセス解析ツール屋の某所でのコラム内容がひどすぎる件など、書きたいトピックはあるものの更新できない状況がつづいている。気長にお待ちいただきたい。

2007/05/24

Croogle? Crooverture?

Google のトップページから「広告掲載」のリンクをクリックすると表示される、広告ソリューションの案内ページ(http://www.google.co.jp/intl/ja/ads/)。アドワーズ広告に出稿する広告主と、アドセンスプログラムに参加するウェブサイト運営者、それぞれが迷わないように上手くナビゲートしている。



かたや、6月からモバイル向け連動型広告枠をオークション販売すると発表した某企業のページ(http://ad.crooz.jp/)。



いちおう上場している企業のはずだが、大丈夫なのだろうか。あとビジネスモデルも。

*Internet Archive によれば、少なくとも昨年の今頃は、自前でデザインしたページを表示していたようだ。

関連する(かもしれない)エントリー:


【2007/07/10 追記】
どうもそういう社風のようで。参考となるエントリー:清水氏のいうことも分かるが、どこまでを「健全なパクリ」とするか、ぼちぼち境界線上に載っている事例のような気がしないでもない。

*経由:上原さんのエントリー。「この方」といいながら特定エントリーへリンクするあたり、芸がこまかい。

2007/05/05

米Yahoo! 創設者、Earth day にスモウをとる

米Yahoo! の公式ブログ「Yodel Anecdotal」に、新緑の季節にふさわしくさわやかな(?)スモウ(相撲)の記事が。

カリフォルニア州Sunnyvale の米Yahoo! 本社では、4月22日のEarth Day に先立つ一週間、社内におけるエネルギーの無駄遣いを20%削減。ごほうびとして共同創設者のJerry Yang (ジェリー・ヤン)とDavid Filo (デビッド・ファイロ)によるスモウの試合が開催される運びとなったそうだ。



ツタをまとわせた肉襦袢を着込んでスモウに興じる二人と、それを取り囲んで声援を送るYahoo! 社員。Jerry とDavid のどちらが勝ったのか、は追って公開されたビデオで確認していただきたい。

……しかし、なぜスモウ? 実はYahoo! とスモウ(相撲)の関わりは同社のディレクトリ検索サービス開始時にまでさかのぼる。Jerry とDavid の二人は大の相撲ファンで、1994年のサービス誕生時、データベースはJerry のワークステーション「Akebono(曙)」に、検索ソフトウェアはDavid のコンピューター「Konishiki(小錦)」にそれぞれ格納されて運用されたのだという(参照:「The History of Yahoo! - How It All Started...」)

またサービス開始当初、URL は二人が所属していたスタンフォード大学のサブドメイン「akebono.stanford.edu」として運用された。このURL には現在でもアクセスが可能で、曙の手形を背景画像に「ここはかつて、あのYahoo! のhome だったんだよ」というメッセージが表示される。スタンフォード大学、粋だねえ。
(経由:Satomi-sanのエントリー)。

2007/05/01

「LPO 」提供企業のLPO

LPO(Landing Page Optimization)という言葉もそろそろ定着し、一時の熱狂も落ち着いてきている感がある。一般に注目されるきっかけとなったのは2005年の某社のコラム(このへんとかこのへん)だろうと思うが、クリック後のユーザー体験に焦点を当てたLPO の考え方は、Web サイト運営やページ制作の領域に棲息する人たちにSEM 近接領域への参入機会を与え、ひところは猫も杓子もLPO 、といった活況を呈していた。

#某ビジネス出版社系コンサル会社が嬉々としてLPO に関するコラムを発表していたさまは今でも忘れられない……(w

すみません、これはPLO(パレスチナ解放機構)です

では、2007年も中盤に入り、日本のLPO はどのくらい進化したのだろうか。Yahoo! JAPAN なりGoogle といったメジャーな検索エンジンで「LPO 」と検索し、どの程度「LPO 」に関連する情報が適切に得られるかを確認してみた。個別の企業をあげつらうのが目的ではないので、固有の企業名やスクリーンショット等は載せない方向で。

当たり前のことだが、通常の検索結果(オーガニックと呼ばれる部分)ではそれなりにページ内容がLPO に関連していない限り上位には表示されず、突拍子もないページが出ているケースは見られなかった。問題は検索連動型広告の出稿企業だ。ざっと見た限りで、以下のような問題点が見受けられた。
  • LPO サービスの紹介ページではなく、その企業が提供するインターネット広告サービス全体の紹介ページにランディングする。細かくいうと、
    • LPO に関するページがそもそも用意されていない
    • ページはあるのだが、その1階層上の目次ページに着地する
    の2パターンが見受けられた。
  • 書いてある内容はLPO そのものなのだが、LPO という単語がページ内に記載されていない。
  • ナビゲーションからメインビジュアルまで米国のものをそのまま使っているため、Above The Fold(スクロールせずに目に入る範囲)の8割以上が英語で、ユーザーが混乱しかねないページ構成となっている。
  • 「File Not Found 」が表示される。

最後のケースは論外だが、着地(ランディング)の体験だけ取り上げても、上記のように適切でないものがかなりの割合で含まれているようだ。ここから、最後のコンバージョンにいたるまでの動線を仔細に検討すると、合格点に達するものはあまり残らない可能性が高い。

またそもそも「LPO 」で検索しているのに広告文言(タイトル・説明文)にそのキーワードが含まれていない、というLPO 以前のケースも見受けられた。「紺屋の白袴」というと聞こえはいいが、実際のところ残念ながら、日本のSEM はまだまだ玉石混交といった状況なのかもしれない。

2007/04/30

ユーザビリティと3D

たまには基本にかえろう、ということで、ヤコブ・ニールセン博士のユーザビリティに関する書籍を読み返していたりする。1995年に運営を開始したJakob NielsenのAlertboxから「ユーザビリティの改善に役立つ50のコラムを厳選し、まとめた」というふれこみのこちら:

ヤコブ・ニールセンのAlertbox -そのデザイン、間違ってます-ヤコブ・ニールセンのAlertbox -そのデザイン、間違ってます-
Jakob Nielsen 舩井 淳 奥泉 直子

RBB PRESS 2006-07-12
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上記画像には写っていないが、私の手元にある書籍の帯には「Google は騙せてもユーザは騙せない」とある。小手先のSEO に走るスパムチックなWeb サイト(あるいはSEO 業者)がこれまでユーザーに劣悪な経験を与えてきた様を、少し露悪趣味的に風刺しているのだろう。実際にはSEO とユーザビリティは通底する部分も多く、特にHTML がデザインのための言語だと誤解されていた1990 年代後半〜2000年代初頭において、ユーザビリティを学ぶことでSEO のスキルも上がった時代、というのが確かに存在した。

ということで同書には、「フレームが(おおむね)ダメな理由」のように時代を感じさせるコラムから、「ユーザインターフェースとしてのURL」「リセットとキャンセルボタン」のように現在まで輝きを失わない(そしてまだまだ理解・実践されていない)真実まで、懐かしく、かつ改めての勉強にもなる内容が盛り込まれている。基本的にはすべて上記「Alertbox 」に現在も掲載されているものなので、お金をかけたくない向きにはサイトでの閲覧で済ませることも可能だが、書籍として一覧性のある形でまとまっていることのメリットもあるだろう。

そんな訳で、書籍をぱらぱらとめくっていて見つけたのが「2D は3D よりすぐれている」という1998 年のコラム(サイトでも読める)。「画面もマウスも2Dのデバイスだ」の一文が効いている。山下たつを氏がFPN のセカンドライフ礼賛記事つっこみを入れているのを見て、たつを氏が本質を理解していることを実感すると同時に、基本というのはそう簡単には変わらないということを再確認した次第。

#あー、基本に帰ろうといっても「bttb」みたいなのはもちろんNG。
#いま確認すると「リニューアル中です。しばらくお待ちください。」と出るが、
#たぶん二度と復活しないんだろうな……

ついでなのでセカンドライフまわりについて少々。個人的にセカンドライフにピンとこないのは、洋モノくさいデザインを生理的に受け付けないのと、独自アプリケーションであるところ、ユーザーもたいしていないのに企業の論理が先行しているところ、などが原因だろうか。3D の仮想空間も、そのうちGoogle がブラウザの中で動くオープンなものを出してしまうのでは、という気がしなくもない。ちょうどGoogle maps でそれまでプラグイン でしかできなかったスクロール機能をあっさりやってのけたように。

#もちろん実現するのはYahoo! でもMS でもかまわないし、
#バランスや保有するコンテンツとの親和性を考えればむしろそちらを期待したいが、どうか。

2007/04/17

AdWords 公式ブログのURL

オーバーチュア公式ブログの開設から12日後、グーグル「アドワーズ広告」にも公式ブログがお目見えした。ブログ名は、これまで先行して運営されてきた英語版にあやかって「Inside AdWords - AdWords 日本版 公式ブログ」となっている。初回のエントリーは「ついに登場、日本版 Inside AdWords ブログ」。



検索連動型広告における二強が、この時期に揃ってブログ開設に至ったのも何やら興味深い。今後、両社のブログ間でからみがあったりすると面白いかもしれない。

ところで、アドワーズ広告公式ブログのURL だが、本ブログと同じblogspot にホストされており(というより、Google の公式ブログは基本的にすべて同様)、サブドメインは「adwords-ja」が使用されている。「ja」? なぜjp でないのか、と思ってadwords-jp.blogspot.com を直打ちしてみたところ、グーグルとは関係のなさそうな普通のマーケティング担当者が「アドワーズのコツとか~雑誌やサイト上に書かれていることで役立ちそうなものを情報発信」する目的で2005年に開設したブログの残骸が。

普通、日本語版といえばjp だろうし(例:TechCrunch だとjp.techcrunch.com )、誤解を呼ぶ可能性がある状態で放置してよいものか。違うサブドメインを選定したほうがよかったのでは? もしや、URL など打たずに検索しろ、というメッセージだろうか。

2007/04/04

オーバーチュアがブログを開設

米Yahoo! Search Marketing Blog の開設から半年、日本のオーバーチュアもブログを開設した。URL はhttp://blog.overture.co.jp/

本家YSM Blog と同じくWordPress で構築されており、初回エントリーは米Yahoo! のプロダクト・マネージメント担当副社長、マーク・モリッシー氏からのメッセージとなっている。

オーバーチュア公式ブログ

このブログについて」のページを見ると、
このブログを通じて、弊社サービスをご利用いただいている広告主の方々はもちろん、ご検討中の皆さま、オンラインマーケティングに携わる企業/個人の方々まで、皆さまのお役に立てるさまざまな情報をお届けしてゆきたいと考えています。
とあり、当面はまもなく移行が予定されている「新スポンサードサーチ」に関する情報提供を行い、いずれは、より「顔の見える」形での運用を目指すとのこと。

2007/03/03

Google Pen サービス復旧、って?

Ask.com とGoogle 、競合とはいいつつも仲がよいようで。突如インク切れを起こしたGoogle のペンをサービス停止に例えたAsk.com の「February 2, 2007: Google Pen Runs Out.」というエントリー(秀逸!)に反応して、Google から代替のペンが送られてきたのだという。(経由:SearchEngineLand

google-pen

しかもその送り状に書かれた文言がふるっている。
Fortunately, our pen architecture is based upon Redundant Arrays of Inexpensive Drafting Stuff. If any individual component fails, a quick recovery is ensured. We wish you a long and happy writing experience.

意訳:我々のペンの構造は、廉価な筆記用部品を冗長性を保つように配列したものであり、個々のパーツが故障したとしても早期の復旧が保証されます。あなたの長く幸福な筆記体験をお祈りしております。
インク切れを報告するAsk.com のエントリーに掲載された、サービスのパフォーマンスを示すグラフも上質の笑いを誘うが、Google からの返しもなかなか見事なものではないだろうか。(送り状の画像はAsk.com のエントリーで確認可能)

この両社、過去にはAsk 本社のエントランスを激写したMatt Cutts にAsk が反撃したりGoogle の商標まわりにAsk が突っ込みを入れたり。SEM酒場は本来、こういう和み系(?)のネタを扱う場であり、両社のからみは今後も大歓迎だ。

2007/02/03

SEO への評価が上昇 - 米マーケターへの調査から

オンラインでのマーケティング手法、何が効いて何が効かないのか--ad:tech とMarketingSherpa が実施したマーケターへの調査結果が発表された(What Works, and What Doesn't, in Online Marketing )。アーリーアダプター層に相当するad:tech 参加者への調査であるため、マーケター全体を代表するものとして受け取るのはいきすぎだが、ひとつの傾向を表すものとして、なかなかに興味深い。



2005年と2006年との比較で見たときに、ぱっと目につくのは以下だろうか。
  • 「もっとも効く」と評価されているのは、前年にひきつづきPaid Search Ads(検索連動型広告)。半数が高い評価を与えているが、その割合がわずかに下がっている点は気がかり。
  • 自社でリストを構築してのメール・マーケティング(E-mail - House list)も安定して高い評価を集めている。
  • SEO(Serach Engine Optimization)への「効く」という評価が、前年の33%から2006年は45%に大きくジャンプアップ。検索連動型広告での激戦を避けて、あらためてSEO に取り組むという機運の現われだろうか。
  • バナー広告(Banner Ads)を「効かない」と評価する割合が39%から28%へ大きく下がっている。こちらも見直し?
  • アフィリエイト(Affiliate Marketing)への評価が下がっている(効く:29%→25%、効かない:22%→26%)。
日本においてはどのような評価がなされているのか、調査対象者の集め方に難しさはあるものの、ぜひ同様の調査の実施に期待したい。

2007/01/30

言語工学研究所の社長ブログ

業界人であれば必ず世話になったことのある必須ツール「シソーラス(類語)検索」。ご存知のとおり、キーワードを入れて「辞書を引く」と、同義語/広義語/狭義語/関連語/反義語の候補を表示してくれるというツールだ。キーワード選定の参考とするのみならず、執筆時、文章内に同じような表現が続いたときなどにも重宝する。



このツールの提供元である株式会社言語工学研究所の社長、国分芳宏氏が昨年11月にブログを開設し、今のところウィークデイは毎日更新を続けている。ブログ名はベタに「言語工学研究所の社長ブログ」だが、ここはぜひ、URL のディレクトリ名に注目してあげてほしい。
http://blog.ruigo.jp/kokublog/

さすがは1980年代半ばに同社を設立し、その道を極めてきた国分氏だけあって、含蓄のあるエントリーが並ぶ。例えば最近ではアクセントに関するこの記事。あるいは、用語同士の意味的な距離について分かりやすく解説したこちらのエントリーなど。

同氏は言語工学研究所の設立以前はワープロソフト「松」の開発者としても知られたという(参考記事)。直接お会いしたことはないのだが、ブログを読んでいて浮かんでくるのは、決してまじめなだけではない、少し自虐気味の笑いのセンスを持つ、お酒が好きな初老の男性の姿だ。何日かに一度アップされる、ほんの数行だけのエントリーをいくつか引用してみよう。
夕方
飲み過ぎないようにと思うのは、飲み始めるまでです。(12/3)
防寒用具
帽子は防寒用具売り場に置いておいて欲しい。(12/11)
新聞記事
「今日会社のことが新聞に出た」といったら、女房が「何か会社で悪いことをしたの」といっていました。(1/17)
なんだか好きだなあ、この空気の感じ。