業界関係者の間で「大丈夫なのか」と心配されていたドリコムの「行動ターゲティング広告」ad4U。インターネットユーザーの行動履歴を、「ウェブブラウザの基本機能を活用して」(参照)自社が運用も広告配信もしていないサイトでの行動まで含めて照会できる、というふれこみであったのだが、直線的に考えればブラウザの行動履歴をぶっこ抜くくらいしか実現方法がないわけで。
この種の広告に少し詳しい人間の誰もが疑問に思いながらも「ad4Uは国内で特許を申請中のため,技術の具体的な内容は開示していない」(参照記事)とのことで詳細が開示されないままサービスが開始されていたわけだが、まあ案の定というか……このad4U の正体が高木浩光氏のNIKKEI NET への寄稿によって明らかになった。
楽天ad4Uの実際の広告を調べてみたところ、Flashオブジェクトの中に数千個の隠しリンクが埋め込まれており、JavaScriptによってそのリンクの訪問の有無を調べ、どんなカテゴリーのサイトに多く訪問しているかを集計し、そのカテゴリーの広告を表示するようになっていた。高木氏はおそらく優しい方とみえて、「バグの存在を前提にした事業のリスク」などを心配してあげているようだが、この件のポイントはもっとシンプルなはず。まずは「特定の企業から配信される広告は、表示の前に、他者には知られていないはずの自分の行動履歴を数千ものURL と突き合わせて読み取る」と知ったインターネットユーザーがどのように感じるか、だろう。
ブラウザが訪問済みリンクの表示色を変えるのは、ユーザーの利便性を高める(既に訪問済みのページを再度開かなくて済む、あるいは以前訪問したページに効率よくアクセスする)ためであって、ドリコムに訪問履歴を渡すためではない。ad4U、嫌悪感を抱かれない広告、の真逆を行くものといえるだろう。
奇しくも高木氏の寄稿のタイトルが「行動ターゲティング広告はどこまで許されるのか」となっているように、行動ターゲティング広告には、杞憂にすぎないものも含めてプライバシー周りの懸念がどうしてもつきまとう。そこをいかに理解してもらうかについて関係各社が苦心しているところへ土足で踏み荒らしに来たような今回のドリコムの振る舞いは、まったくもって承服しがたい。
ドリコムにはぜひ「行動スキミング広告」という独自カテゴリーを立ててもらい、そこで圧倒的ナンバーワンになっていただきたい。行動ターゲティングを僭称するのはご勘弁を。
#あと、楽天とライブドアがいつまでad4U を採用しているのか、こちらも見ものかもしれない。特許申請中を理由に詳細が開示されなくても、ドリコムはともかく楽天やライブドアが採用しているのなら滅多なことはなかろう、と無理に自分を納得させていた人も多いだろうから(恥ずかしながら筆者もそうだ)。
2 件のコメント:
こういう攻撃から身を守るためには、 Safari でいうところのプライベートブラウズ機能が必須になってくるということですね。
広告業界の直接の顧客は広告主ですが、実際に広告を見てアクションを起こすのは消費者であるということを忘れていては、いずれ身を滅ぼすことになるのではないでしょうか。
>hit さん
コメントありがとうございます。ご指摘のとおりだと思います。今回の場合は広告が表示されるページだけでなく全てのページにおいてプライベートモードでブラウズする必要があって、もうなんだかなあということになりますが。
広告というのはユーザーと広告主を適切に結びつけることで費用をいただくものですが、今回の場合は結びつける手法が適切ではないですね。
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