2008/02/24

SMX West - Search Marketing Expo West 2008 まもなく開催

2/26〜2/28、米国加州はSanta Clara で「Search Marketing Expo West 2008 (SMX West )」が開催される。筆者もひっそりと聴講の予定。現地で見かけたら声をかけていただきたく。ここで紹介できるような気の利いた小ネタが見つかれば帰国後に報告したいと考えている。
#加州ってカリフォルニア州ね、念のため。

SMX logo

ちなみにSMX は、業界の定番イベント「Search Engine Strategies」を長年にわたって手がけてきたDanny Sullivan 氏が昨年あらたに立ち上げた、Search Marketing に関するカンファレンス(詳しくはこのページ)。SMX West は4トラック×3日間の規模で開催される。

*関連するエントリー:

2008/02/21

2006年、ネットはすでに雑誌を超えていた 〜電通「日本の広告費」

電通から「日本の広告費」が発表された。今回の2007年分から推定範囲が改訂されており(*)、推移を見るために2005年にさかのぼって発表している。

*改訂のポイントとして大きくは、雑誌の対象に「業界誌、専門誌、カード誌・会員誌、ローカルタウン誌」を加えたこと、これまで媒体費だけを推定していたインターネット広告に関して広告制作費も加えたこと、旧「SP 広告費」を「プロモーションメディア広告費」とし、フリーペーパー・フリーマガジンを対象に加えたことなどが挙げられる。



考察は他の方がやるだろうし、いろいろ商売ベースの思惑やら政治的な話があるものを論評してもなあという気がするが、1点だけ。CNET では
新聞、テレビ、ラジオ、雑誌のマスコミ4媒体は3年連続して前年を下回り、一方で4年連続増加となったインターネット広告費がついに雑誌広告費を抜き去った。
ネット広告費が雑誌広告を抜き去る、電通発表「2007年日本の広告費」
と報じられているが、改訂後の2006年の数字(上掲画像の右から2列目)を見ると
  • 雑誌広告費: 4,777億円
  • インターネット広告費(媒体費+広告制作費): 4,826億円
で、すでにインターネット広告が雑誌広告を抜いていたことが分かる。だからどう、ということもないのだけど。

#それにしてもなぜ電通のPDF はテキストのコピーを許可しない設定になっているのか。

2008/02/18

米B to B マーケターへの意識調査

MarketingProfs がForrester Research と共同で実施した、B to B マーケターに対する意識調査「B-to-B Marketing in 2008: Trends in Strategies and Spending」が興味深い内容であった。少し前に発表されたものだが、以下、簡単に紹介する(詳細については上記リンクからダウンロードが可能。興味を持った方はどうぞ。連絡先情報などの入力が必要)

この調査はB to B (対企業)のマーケティングに従事するマーケター462人を対象として、2007年の第3四半期に実施したもの。企業規模や業種、回答者の職位など属性はまちまちで、全体のマーケティング予算を把握していない、と答えた人が15%いるなど、ちょっと首をかしげるようなところもある。ただ、B to C (対消費者)のマーケティングに比べて情報の少ないこの分野の傾向を見るにはよいのではないか。

実施しているマーケティング手法

まずは実施しているマーケティング手法を聞いたのがこの図。メールやPublic Relations (広報)についで「Tradeshows (展示会)」が上位に入っている点はいかにもB to B っぽい。ダイレクトメール、紙媒体への広告出稿とつづき、Search Marketing は実施率61%で6番目に入っている。

ちなみに今後の予算の増減について聞いたところ(14ページ)、もっとも増額意向が高かったのは「Online Video, Podcasts, or Rich Media」で56%、ついで「Search Marketing 」に対して55%が予算を増やすと答えている(そのまま、が41%、減らすと答えたのは4%)。利用率が相対的に高く、かつ増額の方針ということは、B to B においてもある程度Search Marketing の満足度の高いことがうかがえる。


目的別の有効度評価

上記はある意味、想定の範囲内。むしろ興味深かったのは以下の3つのグラフだ。目的別に、有効と思われるマーケティング手法を回答させたもので、横軸が実施率(つまり、上掲のグラフを横軸に展開している)、縦軸が「有効である」と回答した率である。横方向の位置関係は3枚とも共通であるため、それぞれが上下する様子に注目してほしい。


リード獲得に有効な手法
リード獲得に有効な手法


まず「リードを獲得する」場合。「Executive breakfasts, seminars 」つまり、上級管理職/決済権限者を対象とした、商談をしながらの朝食や少人数制のセミナーなどの評価が高い。その他、「Inside Sales (内勤営業。テレマーケティングなどのイメージ)」「Webinars (オンラインセミナー)」「Search Marketing 」とつづく。


メッセージを伝えるために有効な手法
メッセージを伝えるために有効な手法


「メッセージを伝える」ということを目的にする場合には、メールと、先ほどの「Executive breakfasts, seminars 」が高い評価を得ている。


ブランド認知の向上に有効な手法
ブランド認知の向上に有効な手法


そして「ブランド認知を高める」のが目的の場合には、「TV Advertising (テレビ広告)」の評価がいきなり跳ねあがる。実施率こそ低いものの、実施した企業はブランディングに関するテレビ広告の効果を高く評価していることがわかる。またPublic Relations (広報)も60%近い評価を得ており、こちらもブランド認知の向上に寄与すると考えられている。

#広告枠の頭に「PR 」とつけるのが横行しているが、当然ながら広告と広報は別物である。アピールとピーアールの語感が似ているのをよいことに混同させようとしているのかもしれないが、広報サイドから見ると迷惑きわまりない話だろう。


このように、目的によってそれぞれの手法の効果は異なっており、自社の目的とその優先順位を意識した上で、予算なども勘案しつつ必要な手法を組み合わせることが重要といえそうだ。なんとなく感じていたことがデータで示されてすっきりした感じではないだろうか。またB to B のマーケティングにおいて「効果が高い」と評価されている手法は、消費者向けのマーケティングのように広告一辺倒でないことも理解しておきたい。

昨今の「広告か、広報か」のような議論も、対象(B or C )、何を売るのか(サービス or 商品 or ...。ハードウェアを売っていると見せて実は導入コンサル料やその後の保守費用で稼ぐ、などもありがち)やその新規性、価格、購買頻度、市場の成熟度、などを踏まえる必要があるように感じられる。

*関連するエントリー:

2008/02/11

baidu.co.jp - 百度(Baidu )とは無関係

1月23日に日本向けの「本格的な」サービス提供を開始した中国発の検索エンジン「百度」(Baidu、バイドゥ)。本家のシンプルなトップページをあえて変えてきたアプローチはAsk.jp を思わせる、といったら縁起が悪いだろうか。まずはお手並み拝見といったところ。

baidu.jp

ちなみに百度の日本向け検索サイトのURL は「baidu.jp」。「jp.baidu.com」などを使う手もあっただろうが、汎用jpドメインを手堅く押さえている。ところが、ついでにbaidu.co.jp を叩いてみて困惑。青を基調としたページに「中国家庭料理」「ブランドウォッチ」「整体サロン」などの文字列が。

baidu.co.jp

baidu.co.jp は、東京に本社を置く「シービーシー株式会社」が使用しており、検索エンジンの百度とはまったくの無関係、ということらしい。ミクシィのようにサービスサイトは「mixi.jp」、企業サイトは「mixi.co.jp」と使い分けをしている例もある(他にはエフルートなども同様)だけに、すっきりさせておきたいところだが……

この件、実は2007年3月に日本知的財産仲裁センターからの裁定が出ていたそうで。
裁定によると、シービーシーは2006年12月7日に同ドメイン名を登録していた。これに対して百度は同年12月末、代理人を通じてドメイン名の譲渡申し入れを行なったが、シービーシーが譲渡の提案を拒否していた。
「baidu.co.jp」を百度に移転せよ、知的財産仲介センターが裁定(INTERNET Watch)
裁定が出てからもう1年近くになるが、まだ決着していない、ということなのだろうか。オールドスクールには懐かしい「goo.co.jp」をめぐるもめ事(何のことやら、という方はこちらなど参照のこと)のようにならなければよいのだが。まあ今どきのインターネットユーザーはURL の直打ちなどせずに「百度」ないし「Baidu 」と検索してbaidu.jp にたどりつくだろうから、それはそれで大丈夫なのかもしれない。……っておい。(「セカンドサーチエンジン」ってそういうことじゃないよね)


#今回「baidu.co.jp」がヘンだと教えてくれたのは同僚のSH。Thanks!

*関連するエントリー:

2008/02/06

それはペイド・インクルージョン(Paid Inclusion)ではない

livedoor ディレクターBlog に「モバイル検索の裏側」というエントリーが掲載された。ジェイ・リスティングの山田という方が「ケータイlivedoor」のモバイル検索について語っている。モバイル検索におけるディレクトリ型検索エンジンの有効性を説明し、
登録サイトをロボット型検索エンジンのクローリングの基点にすると共に、登録サイトが優先的に表示されるようなアルゴリズムを組むことにより、検索結果の精度を向上させる取り組みが成されています。
と紹介している。つまり、もし仮にケータイlivedoor でのSEO を検討する際にはまずディレクトリ登録(≒Jリスティング社の「Jエントリーモバイル」)から、という話だ。



さて、明らかな間違いが次の「モバイル検索連動型広告について」の章に含まれている。いささか長くなるが、当該部分を引用する。
モバイルにおいてはロボット型検索エンジンのみの場合、前述の要因の影響で検索結果として不十分なものになる可能性が高い状況です。そこに対する解決策として利用されているのが、ジェイ・リスティングの検索連動型広告であり、ペイドインクルージョンという手法です。

ジェイ・リスティングの検索連動型広告では、事前にクライアントが購入するキーワードとそのサイトの関連性を審査しています。その審査を経た広告を検索結果の上位に混ぜ込むことで、検索ワードと関連性が高い検索結果としての広告を提供することに繋がっています。(強調は筆者)
うーん……。ペイド・インクルージョン(Paid Inclusion。Pay for Inclusion、略してPFI ともいう)とは、クローラーによるデータ取得が難しいサイト(例えばCGI を用いたECサイト)などを対象に、有償でWeb ページのデータを検索エンジンのインデックスへ格納するサービスを指す。山田氏が書くような「PCの世界においてはタブー視されている手法」ではなく、クローラーの性能が低かった時代にはそれなりの意味を持つサービスであった。ただし、必ずしも検索結果における上位表示を保証するものではない、という点を認識しておきたい。クローラーの性能があがり、かつ、まっとうなSEO の知識に基づく検索エンジンフレンドリーなサイト構築が普及してきた昨今ではほとんど顧みられることがなくなりつつあるプログラムといってよい。

ということで、上記のように「広告を検索結果の上位に混ぜ込む」というのはペイド・インクルージョンとは本来関係がない。混ぜ込む先はインデックスであるべきで、検索結果へダイレクトに「混ぜ込む」のはまた別の話だ(要は中国における百度の検索結果などと同一、という理解でよいだろうか?)。それはモバイルであっても「タブー視される手法」だろうと考えられるし、広告は広告として判別可能な形で掲載するのがのぞましいのではないだろうか。

意図的に話を混同させているのであればたちが悪いが、心からそう思い込んで書いている可能性もあって判断しがたい。思い込みで書いてしまったのであれば、早期に訂正されることをおすすめする。検索結果ページの表示形式についても(筆者の理解したような手法であるならば)再考されるべきかと思う。

2008/02/05

インターネットユーザーの時間を値付けする

#業界騒然の、現在進行中の例の件について考える際の材料にしていただければ、と。

たいへん興味深い「Grabbing Those Valuable Search Minutes」なる記事がeMarketer にアップされている。



まずはこちらの図。ユーザーがインターネット上で過ごす時間のうち、検索結果ページに接触しているのはわずか4.6%に過ぎず、しかもその割合は年々低下している。それ以外の時間、ユーザーはコンテンツを閲覧したり、コミュニケーションをとったり買い物をしたりしている。検索、検索と騒がれているが、検索している時間は実際のところせいぜいこのぐらいだったりするわけだ。

考えてみれば当たり前のことで、もともとユーザーは自分が必要な情報を得るなり、特定の場にアクセスして交流することを目的としており、検索はそのための手段に過ぎない。言い方を変えると、ユーザーは別に検索という行為そのものを目的としている訳ではない。従って、ユーザーがインターネット上で過ごす時間の中で、検索に接しているのは20分の1にも満たないごくわずかの時間ということになる。



ところが、広告主がユーザーとの接触を求めて広告費を投下する時間区分、という観点で見ると、「検索している時間」に対しては2007年で1時間あたり5.07米ドルが投じられている。かたや、「コンテンツを閲覧している時間」に対しては1時間あたり0.49米ドル。つまり、同じ1時間に対して広告主は10倍以上の価値の差を感じていることになる。

この数字からは、ユーザーの興味・関心が顕在化し、かつその内容を検索キーワードを通じて容易に把握可能な「検索」という場の価値がうかがえる。そして、この場に広告の考え方を持ち込んだビジネスモデルの秀逸さと、その価値ある場を押さえているプレイヤーの強さが浮かび上がってくるだろう。しかも上掲の図は、この検索という場の価値が2006年から2007年にかけてさらに上昇したことを示している。

こういった現状把握をベースに、今後の業界勢力図を考えてみるのは面白いのではないか。

あくまで、この価値ある「検索」という場の奪い合いを続けるのか。それとも、マネタイズ(収益化)が十分でないとも解釈しうるコンテンツ閲覧やコミュニケーションの時間をいかに収益化するか、という点にフォーカスするのか。もちろん単価が低くても、コンテンツ閲覧に費やすユーザーの膨大な時間を自社の陣営に集約することができれば、それは十分な収益源となるだろう。

*もちろん、現在の検索のあり方が完成形でない以上、いまある検索よりもユーザーの期待に応えるものを実現できれば、こういったレースの前提が変わってしまうことは言うまでもない。