2007/09/12

comScore の微妙なプレスリリース

comScore の日本上陸には期待していただけに残念。誰も妙だとは思わないのだろうか。MarkeZine の記事より「コムスコア・ジャパンいよいよ始動、『qSearch 2.0』で日本の検索市場を斬る」。
プレスリリースでは、日本の検索市場でしのぎを削るYahoo!と Googleの2006年7月と2007年7月のデータに関する「qSearch 2.0」のレポートも公開されている。全検索件数は、2006年7月の47億5,400万件から2007年7月の57億9,500万件へと21.9%増加している。これをYahoo!とGoogleのそれぞれのデータを見ると、検索件数はYahoo!が31億3,400万件から27億4,400万件と 12.4%減、Googleは、13億2,200万件から20億2,700万件と53.3%増。
文中には2006年7月と2007年7月、それぞれの月における全検索件数およびYahoo! 、Google での検索件数が記載されている。つまり、全検索件数からY! とG の検索件数を引くことで、「Yahoo! JAPAN とGoogle 以外の検索エンジンの合計検索件数」を求めることができる。主要なところではMSN, Excite, Goo, Infoseek などだろうか。計算してみたのがこちら(Other の行)。



さて、この一年の間に、2強以外の検索エンジンにおいて検索件数が大幅に増加するような出来事があっただろうか? 個人的には思い当たるものがまったくない。あくまで感覚値だが、Other の割合はここ数年、1割前後というのが妥当なところではないかと思う。つまり、2006年7月の数値がおかしい(2強のシェアが高過ぎ)と推測されるのだが、どうか。

*9/13 加筆:Other の伸びは、件数ベースでもGoogle の伸びを上回っている。伸び率では前年同月比243.6%増というから、通常なら大躍進のはずだ。この数値に何が内包されているかは説明が必要だろう。

#Other が実際に増加していて、それが2ちゃんねるやYouTube だったらそれはそれで興味深い数値だが……

原本である英文のリリースにあたると「Searches Per Searcher」(一人当たりの検索件数)の数字も確認できるが、こちらも率直に言って「?」がつく。日本においてはGoogle はインターネットリテラシーの高いヘビーユーザーが使う、というのが一般的なイメージとなっており、一人当たりの検索件数も多いものと推測される。しかしこちらの調査では、Yahoo! JAPAN での数字が低下する一方、Google での数字が上昇し、逆転したことになっている。

「思い込みはともかく、実際の数字はこうだよ」と言われれば「そうなんですね」というしかないが、上述のOther の件があるだけに素直には納得しがたい。関係者には詳細の開示をいただければ幸いだ。

SEM 業界と旅行業界の相似

#どこかに同じような発言があったらごめんなさい、なのだが……

日本のSEM、とりわけ検索連動型広告の世界と航空/旅行業界は、ビジネスの構造に似たところがあるのではないか、という思いつきを何となく書いてみる。

【キャリア(航空会社)】
JAL/ANA の2強が熾烈な競争をくり広げている。時折り小規模事業者の参入があるものの、だいたいは採算が合わず撤退するか、青息吐息の状態。

【代理店】
JTB などの歴史ある旅行代理店から、格安航空券の取り扱いに始まりいまや一定の存在感を持つに至った新興系の旅行会社(HIS など)、西遊旅行のように限られた地域に特化した代理店まで、お互いがなんとなく意識しながらもとりあえず棲み分けを行っている。実際の現地オペレーションはアウトソースしているケースも。

【利用者】
自分で手配する手間をいとわない旅行者はオンラインから直接申し込みを行う時代に。とはいえ主流はまだまだ代理店経由。

それぞれの固有名詞に対してSEM 業界ではどの企業が相当するかなど、業界の方であれば何となく浮かんでくるのではないだろうか。もちろん合致しない点も多いが、自分の属する業界のことは案外見えないものなので、他の業界に置き換えてみたら、というのが本エントリーの主旨。ではSEO をはじめとする他のマーケティング手法は何に相当するか、など、考え出すとけっこう面白いのは私だけだろうか。

2007/09/10

Van Halen 公式サイトのURLは?

少し前の話になるが、某KM さんのmixi 日記経由で「David Lee Roth がVan Halen 復帰、米国ツアーへ」という情報を得た(参考:CNN.co.jp)。初代ボーカルのDave Lee Roth といえば一般には"Jump" が想起されるかもしれないが、業界的にはやはり"Panama" だろう。なぜPanama ?と疑問に思った方にはこちら:

パナマ運河が世界の物流を一変させたことにちなんで、開発コード「パナマ(Panama)」と名付けられていたオーバーチュアの「新スポンサードサーチ」。
何が変わる? 「新スポンサードサーチ」の変更点&新機能をチェック


そういえば、Van Halen 一家がOverture Services 発祥の地(もっといえば、その母体となったIdea Lab の本拠地)、Pasadena(パサデナ)で育ったというのはもしかしたらあまり知られていないかもしれない。豆知識ということでどうぞ。


本題:URL 直打ちの問題点

さて後日、上記Van Halen 再結成のニュースについて詳細を確認しようとした際、ドメインが「バンド名+com」だったことを記憶していたので「www.vanhalen.com」とひとつづきに打ったところ、出てきたのはVan Halen のファンサイトだった。

Van Halen 公式サイト Van Halen のファンサイト


公式サイトは「www.van-halen.com」とハイフンが入る(左が公式サイト、右がファンサイト)。この経験を通じて、あらためて検索によるナビゲーションの優位性に思い至った。URL を直接入力することの問題点としては他に、
  • www の有無
  • ドメインは?(com/net/org/jp/co.jp/ne.jp...)
  • Typo(タイプミス)の可能性
などがあり、とりわけアルファベットになじみのない日本のインターネットユーザーにとって、URL を直接入力することがいかに敷居が高いか、はもっと認識されてよいだろう。


検索の役割:始まりの終わり

……とだらだらと書いてきたのは、日本における検索のクロスメディア利用に関する事例を収集し、検索エンジンと各種広告との相互関係を研究してきたブログ「検索エンジンと広告」が終了のアナウンスを出していたのを目にしたから。

今回の判断に至るまでにはおそらくいろいろとあったのかもしれない。ただ、(上述のような)単なるナビゲーションとしての検索ではなく、全体として効果を生み出す広告キャンペーンの一部としての検索、という視点から収集された事例の数々は、成功例/失敗例を問わず、ひとつの時代を記録するものとして貴重なコレクションとなっている。

例えば日経新聞の広告企画として二十数社を集めて検索キーワードでのサイト来訪を訴求した「けんさくGO」のうち、Organic/Paid のうち何ひとつとして表示されない企業があった例だとか(何を考えて広告企画へ賛同したのか……これはダメな例の極北)。逆に「服装自由」など、無理なく検索を誘発する好例もあまた記録されている。

Firefox、Safari はもとより、IE も7からはブラウザ自体に検索窓が配置されるようになった今こそ、ユーザーを迷わせず、的確なサイトへ誘導する検索の役割が評価される時代に来ていると思われる。また効果を計りがたいマス広告を手がけてきた総合代理店、狭い領域での費用対効果の最適化に邁進してきたネット専業代理店ともに、包括的なキャンペーン設計の重要性について認知が進み、立体的な効果計測とそれぞれの施策の寄与度評価について機運が盛り上がってきたところだろう。

「ブログ自体も残すかどうかを検討中です」とのことだが、杉原氏には業界全体の資産として、ぜひとも残すことを希望したい。